和歌のレトリック
『和歌の本質と表現』(勉誠社)は、いくつかのテーマにつき、それぞれの著者が書いているのだが、読んでいて不満を感じる。腹立たしいところもある。それについては、一巻を読み終わってから触れることにして、今日は尼ケ崎彬「和歌のレトリック」の外形をまとめておく。
紀貫之による和歌の定義(古今集仮名序)
心に思ふことを見るもの聞くものに託けて言ひいだせるもの
(付託を和歌の基本条件と考える)
付託のレトリック
*内容面(何を何に付託するか)
恋の恨みや老いの嘆きなど個人生活上の心情に花鳥風月など
四季の景物を取り合わせたものが多い
*形式面(異なるものをいかにして結びつけるか)
二つの言葉に連想関係がある場合、連想を呼び起こすレベル
として
①音声のレベル(序詞、掛詞)
音の類似つまり同音異義語の関係を利用
②意味のレベル(見たて、比喩、縁語)
類似にもとづく関係と隣接にもとづく関係=見たて
特定の付き合いを反復使用した連想の類型的パターン=縁語
③文化的慣習のレベル(引用、歌枕、本歌取り)
好んで反復使用されてきた一群の言葉があり、新しく歌を作る
場合にはこの伝統的語彙を使用することが正統的和歌として
認められる。
これだけでは、ほとんど何のことか分からないであろう。著者の尼ケ崎彬は、それぞれに例歌をあげて詳細を論じているので、なかなか説得力がある。