天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ほととぎす

ほととぎす

 初めて見たときは、奇妙な花、気味悪い花と思ったものである。漢字では、杜鵑草、時鳥草 と書く。ユリ科多年草。百合の花を小さくしたような形で、濃紫の斑点が鳥の杜鵑の胸毛の斑点に似ているところから、この名が付いた。植生は、関東以北から九州にかけて見られる。もっぱら俳句に詠まれているが、残念ながら有名な作品がないので、話題にもならない。鳥と紛らわしいのも詠みにくいのではないか。歳時記にも例句が少ない。
     墓の辺や風あれば揺れ杜鵑草   河野友人
     殉教の土の暗さに時鳥草     後藤比奈夫


  きよろきよろとあたり見回し羽根ひろぐ衆人環視の池の鵜の鳥

     もみづるや赤地に白字「蚤の市」
     秋風や鵜にふところのありと見る
     東京は上弦の月肩を抱く
     杜鵑草神雷戦士の墓に会ひ


[追伸]「短歌人」川井怜子さんから、小池光にほととぎすの歌がある
   ということで、次の二首を教えてもらった。


  ほととぎすひとすぢ咲けば空晴れて悲劇の中にたたずむ如し
  気のふれし母を眠らす夜はふけて鳥ほととぎす花ほととぎす