色彩のある短歌
「歌壇」4月号には、「色彩のある短歌」という面白い特集が載っている。小島ゆかりと島田修三の評論がふたつとも読み応えあり。また、8人の歌人が十首ずつ色彩のある短歌を選んでいる。
これら選歌の中で目立つのは、塚本邦雄(4首)と高野公彦(5首)である。塚本邦雄の場合、今回の色彩に限らずいろいろな切り口で歌をたのしく鑑賞できる。例えば、この号で、岩田正が「父」の歌を取り出して論じている。
以下に、取り上げられた高野公彦のすべての歌をあげる。
父と並び黄金見をりゆつくりと父を追ひつつわが身も古ぶ
雨ほそく降り込む池は瓏銀のひかり帯びたり寒き札幌
精霊ばつた草にのぼりて乾きたる乾坤を白き日がわたりをり
みどりごは泣きつつ目ざむひえびえと北半球にあさがほひらき
黄に熟れし重たきザボン夜の卓に一文体のごとくかがやく
一度、高野公彦の今までの全歌集から、色のある歌を抽出してまとめたい誘惑にかられる。特に北原白秋の色彩表現と比較してみたい。