天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

短歌のリズム(続)

 『短歌研究』七月号の特集「七夕に寄せて」の歌の中から、小池光の見方に従って例を抜いてみよう。


  亀を飼おうと思う本気があぶないとにやりと忠告をする人ぞある
                     永田和宏
  *初句七音の字余り。ゆったりとした始まりが余裕ある歌の
   内容にマッチしている。


  バラ園に薔薇と人、やがて薔薇影と人影濃ゆくこひびとのやう
                     米川千嘉子
  *第二句八音の字余り。ここを加速して読むので、薔薇影と
   人影の交錯を感じる。


  死の床はここにありしと子の手ひき八畳の間の畳の縁をまたぎつ
                     河野裕子
  *第四句十一音の大幅な字余り。たどたどしい感じと不安感
   が出る。


  高熱の頬かすめゆく薄明の風はかなしみを伝へて
                     島内景二
  *第四句八音、結句は四音。大きな欠落感がでて、悲しみを
   強調している。