天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

秋の蝶

薊と蝶

 蝶は古来、ひらがなでは「てふ」と書いた。万葉集には、二箇所、歌の序文に出てくる。
「梅花の歌三十二首併せて序」に「・・・庭には新蝶舞ひ、鳥はうすものにこめられて林に迷ふ。・・・」とあり、また「二月廿九日、大伴宿禰家持」と題する序に「・・・戯蝶花を廻りて舞ひ・・・」と出てくる。集中の歌には詠まれていない。


  百とせの花に宿りて過してきこのよは蝶の夢にぞありける
                     詞花集・大江匡房
  籬(ませ)に咲く花に睦れて飛ぶてふの羨しくもはかなかりけり
                     山家集西行


 俳句では、単に蝶といえば、春の季語。他の季節に現れる蝶は、その季節を示して区別することになっている。


      ますぐには飛びゆきがたし秋の蝶  阿波野青畝
      西の塔より東へと秋の蝶      鷹羽狩行
      我が影の伸びゆく先の秋の蝶    星野 椿


      野あざみにいのち永らへ秋の蝶