天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

短歌朗読(3)

江ノ島ビーナス3

 和歌、短歌を声楽という観点から見るとき、歌謡との違いを確認しておく必要がある。文献の上での最古の歌謡は、もちろん、「古事記」「日本書紀」にある記紀歌謡である。ただ、それらがどのように謳われたか記録がないので、和歌の披講との違いが分からない。
 歌謡は、節をつけてうたわれるが、大別すると、豊かな旋律をもつ「謡い物」と単調な旋律を反復する平曲などの「語り物」とがある。
 平安時代には、民謡から生まれた神楽歌、催馬楽、また貴族の間ではやった漢詩の朗詠がある。これらは現在、雅楽に引き継がれている。更に平安後期には、流行歌に相当する今様がはやり、「梁塵秘抄」に収められた。中世歌謡の始まりである。なお、仏教歌謡も忘れてはならない。七五調を主体とした和讃が典型である。
 鎌倉時代には、早歌(そうが)という長編歌謡。室町時代には、人生模様をしゃれた歌詞でうたった小歌。猿楽能からは、演劇的な謡曲が生まれた。
平安時代以降に生まれた歌謡は、それぞれ歌い方が伝承されているので、和歌の披講との違いは明確といってよい。