鰯
ニシン科の真鰯をさす。ウルメイワシ、カタクチイワシにも使う。沿岸性の表層回遊魚。大きさにより中羽、大羽などと呼ぶ。
日は暮れぬ鰯なほ干す旋陀羅が暗き垣根の
白菊の花 北原白秋
小鰯を簀の子に干してひろき庭町は雑音の
なき真昼なり 松村英一
幼子と妻とむつみつつ鰯焼く火に照られゐて
夕寒きかな 木俣 修
鰯やきて夕餉に向ふわが母にやさしく言へばわが泪ぐむ
扇畑忠雄
舌を刺す鰯を分けて喰ふ夕餉妻にたぬしき事もなからむ
近藤芳美
鰯を食ひたる口を拭ひつつ書きたらむ「いづれの
おほむときにか」 山埜井喜美枝
戦火映すテレビの前に口あけてにつぽん人はみな鰯
高野公彦
手にのせてうるめ鰯のまなこみよ能登の潮にあらはれ
澄みて 山田あき