天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

戻り梅雨

片瀬東海岸

 梅雨明けしたはずの湘南海岸も梅雨に逆戻り。学校は夏休みに入ったが海の家に客の姿が見えない。沖から霧が押し寄せてくる。


      夏休み雨をのがるる射的かな
      蝉鳴くや誰姿森元使塚
      梅雨明けの供花新しき御霊窟
      腰越に生しらす買ふ霧の朝
      裏側に龍の絵を描く海の家
      をさな児のねむる石像むくげ咲く
      釣竿の先にとまるや赤とんぼ
      炭火焼土用鰻に客の列
      ガラス製徳利傾く冷酒かな


  大いなる誰姿森元使塚「南無妙法蓮華経」跳ねたる
  横綱はみな蒙古人巡業に青き布巻く元使塚あり
  江ノ電が近づく気配地魚の干物つくれる腰越通り
  波待ちて腹這ふ黒きサーファに霧立ちこむるこゆるぎ岬
  クレーンに漁網吊るして吹き付くる水流激ししぶき濁れる
  ま昼くる訪問入浴サービスカーつばな通りの人押しのけて
  デパートと駅をむすべる回廊のフルート吹きは白髪ふえたり
  生前に墓をつくれば安堵して長生きするもこの世なりけり


[参考]片瀬・常立寺の元使塚
    片瀬の常立寺は、鎌倉時代に龍口で処刑された罪人を弔う
    ための寺であり、杜世忠ら元の国使ら五名も処刑されて
    この地に葬られ、五輪塔が建てられた。これには、青い布が
    巻かれているが、モンゴル出身の力士が地方巡業で藤沢に
    くる時に、捧げたもの。青はモンゴルで英雄を意味する。
    朝青龍白鵬や、モンゴル国大統領、ナンバリーン・エンフ
    バヤル夫妻もこの元使塚に参拝している。