冬晴れた日に城ケ島から見る雪の富士山も実に美しい。雪を冠った富士山は日本美の象徴であり、万葉の頃から和歌によく詠まれている。山部赤人の有名歌はあげるまでもないであろう。
富士の嶺に降り置く雪は六月(みなづき)の十五日(もち)に
消ぬればその夜降りけり 万葉集・作者未詳
田子の蜑の宿までうづむ富士のねの雪もひとつに冬は来にけり
藤原信実
秋まではふじの高嶺にみし雪を分けてぞ越ゆる足柄の関
藤原光俊
まがなしき春の霞に富士が嶺の峰なる雪はいよよかがやく
若山牧水
雪冴ゆる富士をそがひにあしびきの山松林風とよむなり
吉野秀雄
きさらぎの浅葱の空に白雪を天垂らしたり富士の高嶺は
吉野秀雄