天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

富士のうた(3/5)

冠雪の富士

  不士のねのふもとをいでて行く雲は足柄山の峰に
  かかれり                賀茂真淵


  するがなる富士の高嶺はいかづちの音する雲の上に
  こそ見れ                賀茂真淵


  心あてに見ししら雲は麓にておもはぬ空にはるる富士
  のね                  村田春海


  一すぢの糸の白雪富士の嶺に残るが哀し水無月の天(そら)
                      若山牧水
  駿河なる沼津より見れば富士が嶺の前に垣なせる愛鷹
  (あしたか)の山             若山牧水


  寄り来りうすれて消ゆる水無月の雲たえまなし富士の山辺
                      若山牧水
  遠つあふみ大河ながるる国なかば菜の花さきぬ富士をあなたに
                     与謝野晶子
  土肥の海漕ぎ出でて見れば白雪を天(あめ)に懸けたり富士の
  高嶺は                 島木赤彦


賀茂真淵と村田春海は、富士山の高さを讃美している。
若山牧水は宮崎県東臼杵郡東郷村(現・日向市)の生まれだが、沼津の自然を愛し、特に千本松原の景観に魅せられて、一家をあげて沼津に移住し、そこで没した。
よって富士山は日ごろから眼前に親しんでいた。
与謝野晶子の歌: 遠州静岡県の中央を流れる大井川の菜の花が咲く岸辺から富士山をかなたに眺めている。
島木赤彦は、西伊豆土肥の海に出て冠雪の富士山を仰ぎ見たのだ。