天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

死刑囚の歌

東京拘置所

 いつだったか、角川『短歌』の特集に『死刑囚のうた』があった。朝日新聞などの歌壇欄に、死刑囚からの投稿があったり、歌集を出して話題になることがある。死刑執行を待つ期間の独房で歌を作ることは、心の安らぎになるのであろう。時の移ろいと生命の輝きが身に沁みて感じられることだろう。


島 秋人  本名中村 覚は、新潟県で強盗殺人事件を引き起こした。
     昭和35年の一審の死刑判決後、昭和42年の死刑執行
     までの7年間、獄中で短歌を詠みつづけた。

  ばら紅き獄庭(には)を見てをりほんたうに今年限りの夏かも知れぬ
  ながらへる花のいのちの愛(かな)しさに都忘れのむらさき淡し
  白花のぎぼうしひらく灯に映えて弥勒菩薩の指に似たりき


岡下 香  昭和58年に東京都杉並区のアパート経営の女性ら2人を
      殺害した。平成20年4月10日、東京拘置所で死刑執行。
      享年61歳。

  天国へのパスポートもう期限切れなのか何処で乗るのか駅も
  分からぬ
  未来へと旅立ちのベルが鳴る 鳴り止まぬうちはまだ何かが出来る
  涙で消えない罪だから太陽の光で清めたい その太陽が拝めない


坂口 弘  元連合赤軍中央委員会書記長、テロリストであり、リンチ・
      殺人で平成5年に死刑が確定。死刑が執行されないのは、
      共犯者の坂東國男が国外逃亡して裁判が終了していない
      ためという。

  わが胸にリンチに死にし友らいて雪折れの枝叫び居るなり
  手をかざし房の小窓に夜の星を深く探せば十あまりあり
  振向けば窓と格子のあわいにて猫が見ており行きて頬よす