菖蒲
サトイモ科。昔はあやめ、あやめぐさ(菖蒲草と書く)と呼んだ。現在のあやめ(花あやめ)はアヤメ科であり、全くの別種。では何時から区別ができるようになったか? 定かでない。和歌では、時鳥とともに詠われることが多かった。万葉集には、あやめぐさとして十二首に詠まれている。邪気を払うので端午の節句には風呂湯にいれる。菖蒲湯である。
霍公鳥(ほととぎす)待てど来鳴かず菖蒲草玉に貫く日をいまだ
遠みか 万葉集・大伴家持
霍公鳥(ほととぎす)いとふ時なし菖蒲草鬘(かづら)にせむ日此
ゆ鳴き渡れ 万葉集・田辺福麿
うちしめりあやめぞ香るほととぎす鳴くや五月の雨の夕暮
新古今集・藤原良経
五月雨に水まさるらしあやめ草末葉隠れて刈る人のなき
金槐集・源実朝
菖蒲(あやめ)葺(ふ)く今日のあさけに家は出づわかき命を
いとほしみつつ 古泉千樫
軒にさす菖蒲(さうぶ)の葉さき露ひかり朝戸くる君がすがたし
おもほゆ 古泉千樫
菖蒲一束わがしかばねをおほはむに恥づ人殺し得ざりしこの手
塚本邦雄
菖蒲湯に煮えし菖蒲の束抱きて少年、父となるまでの生
塚本邦雄