天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

うるめ鰯

 今年は、秋刀魚が不漁で鰯が豊漁という。鰯といえば、普通はニシン科のマイワシを指すが、潤目鰯、片口鰯などにも言う。宮中では、官女が「むらさき」と呼んだ。


  鰯寄る細江のそらのうちけぶり鳶の群れゐて啼けば悲しき
                        若山牧水
  手にのせてうるめ鰯のまなこみよ能登の潮にあらはれ澄みて
                        山田あき
  幼子と妻とむつみつつ鰯焼く火に照られゐて夕寒きかな
                        木俣 修
  曳きに曳く網は鰯の群跳のしぶき見せつつ真近くなりぬ
                        鈴木康文
  鰯(むらさき)を食ひたる口を拭ひつつ書きたらむ「いづれ
  おほむときにか」              山埜井喜美枝