天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

さくら花(3)

岩波文庫版

 鎌倉若宮大路の桜を見に行った折に、源実朝はどんな桜の歌を詠んだのか気になったので、彼の『金槐和歌集』を調べてみた。五十五首ほどが載っている。新古今調である。五首あげておこう。


  櫻花ちらばをしけむ玉ほこの道ゆきぶりに折てかざさむ
  みち遠み今日こえくれぬ山櫻花のやどりをわれにかさなむ
  瀧のうへの三船の山の山櫻風に浮きてぞ花も散りける
  風さわぐをちの外山に雲晴れて櫻にくもる春の夜の月
  春ふかみ峯のあらしに散る花のさだめなき世に戀つまぞする