鑑賞の文学 ―詩 篇(4)―
小池 光『うたの動物記』を読み終えた。外出に持ち歩き電車内で読むというペースなので、時間がかかった。でも一項目即ち一動物について2ページ分の文章なので読みやすい。特長はつぎの二点にある。
□ 動物を詠んだ短歌、俳句、詩をとりあげる。驚くほど幅広い
知識。
□ ユーモアにみちた切れのよい文章。小池調の分りやすい語り口。
読後感を総括すると、これは日本の詩歌鑑賞のきわめつきである。そのうち、中学校や高校の国語の教科書に取り上げられるのではないか。
2011年9月号の「短歌人」の編集室雁信に、小池さんはこの著書に触れて「いくつかの新聞の連載みたいなものをやってきたが、『うたの動物記』はいちばん心に残る。いろいろなことがあったのである。」と書いている。
かってに推測すれば、もとになった連載記事は死が近い病床の夫人を楽しませようと精一杯筆をふるったものである。夫人のことはどこにも触れていないが、奇跡の回復を祈る文章でもあった。夫人は日本経済新聞に載る夫の記事を毎回病床で心待ちにしていたはず。残念ながら、夫人は、この新刊本を目にすることなく他界された。小池さんは心残りであったろう。