葉桜の季(とき)(1)
里山ではところどころに桜の白や紅の花群が残っているが、緑の葉が目立つ季節になった。新緑の初夏にうつる前の晩春である。鶯の声もしたたるように美しく滑らかになってきた。横浜市の舞岡公園では、春田に蛙の鳴き声がこころよく、水中にはお玉杓子の黒い塊がうごめいている。小谷戸の里の古民家では、早くも鯉幟を泳がせている。
尾の垂れてわが頭に触るる鯉幟
古民家の居間掃く朝や紫木蓮
こころよきこゑを競へる春田かな
わが背丈越えて菜の花咲きにけり
白バイが止まる卯月の路肩かな
口々にその縄張りを主張せり花ちる里のうぐひすのこゑ
美しき声に鶯啼く里の池のほとりに翡翠を待つ
おほかたは葉桜となる里山の花の梢に青虫の垂る
うつくしき声に啼きゐるうぐひすの姿むなしき葉桜の陰
蛙鳴く春田の水にうごめくはお玉杓子の黒きかたまり
立看にマムシの写真貼り付けて鳥観察の注意うながす