天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

合歓の花

大船フラワーセンターにて

 梅雨が明ける頃、薄紅色の夢見るような花を咲かせる。糸の房に見えるところは雄蕊。葉は夕暮には合わさって閉じる。その風情が眠るようなところから命名されたという。ただ、漢字の意味は男女の抱き合う姿。


     うつくしき蛇が纏ひぬ合歓の花
                松瀬青々
     風わたる合歓よあやふしその色も
               加藤知世子





  夕合歓のわが等身をねむりゆくかりそめにひとはあはぬ
  ものゆゑ               山中智恵子


  合歓の葉に囁きあれば応へつつ夕雲しばし茜してゐよ
                      小中英之
  合歓ゆれて涼しき夕べ聖ドミニコ修道院の窓すこし開く
                      柏崎駿二
  ああなんとあんな高みに合歓の花いつ死にどきの桃いろ
  ならむ                入野早代子


  熱き掌に頬を挟まるる感触に仰げば合歓の花咲きそむる
                      伊藤幸子
  合歓の木に合歓の葉ねむる下ゆくときついと出でたり
  ゆりかごのうた             黒沼春代