天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

錦木

横浜市舞岡公園にて

 ニシキギ科の落葉低木。五、六月に四弁花を開き、十、十一月に赤色の仮種皮に包まれた種を出す。紅葉は際立って美しい。日本全土の山地に自生する。典型的な秋の風情。鬼箭木と表記する場合もある。


     錦木に寄りそひ立てば我ゆかし  高浜虚子
     火の山のマグマのごとく錦せり  阿波野青畝
     紗のごとく錦木に夜が及ぶべし  矢島房利
     くれなゐの錦木越しの桜島    大高弘達


  錦木の千束(ちつか)に限りなかりせばなほこりずまに立て
  ましものを               加茂重保


  幾度か袖も涙に朽ちはてて立てしかひなきかどの錦木
                     塙 保己一
  錦木のもみぢ葉散りし庭の土うき上りたるけさの霜かも
                       岡 麓
  よひに掃きてあしたさやけき庭の面にこぼれてしるき錦木の花
                      長塚 節
  黄葉(もみじば)のリョウブに隣るニシキギの紅(くれない)に触り
  夕べを在りぬ              田井安曇