天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

時雨(2)

庭に降る時雨

 近代の俳句、短歌から例をあげよう。


     小夜時雨上野を虚子の来つつあらん  正岡子規
     山中の巖うるほひて初しぐれ     飯田蛇笏
     しぐるるや目鼻もわかず火吹竹    川端茅舎
     うしろすがたのしぐれてゆくか   種田山頭火


  ゆうされば大根の葉にふる時雨いたく寂しく降りにけるかも
                      斎藤茂吉
  北時雨向うの山をいくめぐりまた里かけて降りいでにけり
                      岡 麓
  村時雨羽根をすぼめて寒竹の枝にかすかにゐる雀かも
                      北原白秋
  うらはらのそぐはぬねむり昼をいねてはや時雨ふる季節かと思ふ
                      尾山篤二郎
  寺庭の一樹の枇杷に降りかけて夜半の時雨のおとの幽けさ
                      植松寿樹