近代の俳句、短歌から例をあげよう。
小夜時雨上野を虚子の来つつあらん 正岡子規
山中の巖うるほひて初しぐれ 飯田蛇笏
しぐるるや目鼻もわかず火吹竹 川端茅舎
うしろすがたのしぐれてゆくか 種田山頭火
ゆうされば大根の葉にふる時雨いたく寂しく降りにけるかも
斎藤茂吉
北時雨向うの山をいくめぐりまた里かけて降りいでにけり
岡 麓
村時雨羽根をすぼめて寒竹の枝にかすかにゐる雀かも
北原白秋
うらはらのそぐはぬねむり昼をいねてはや時雨ふる季節かと思ふ
尾山篤二郎
寺庭の一樹の枇杷に降りかけて夜半の時雨のおとの幽けさ
植松寿樹