雲のうた(1)
「雲」の語源は「こもる(隠・籠)」から。天空に雨の元になる水蒸気が渦巻いて籠っている状態のもの、ということになる。青雲は青みを帯びた灰色の雲、また青空。「白雲の」は「立つた山・立ち別れ・絶ゆ・斯かる・遠」にかかる枕詞。「青雲の」も、雲の色から「白」にかかり、雲の出ることから「出づ・出でこ」にかかる枕詞。
畝傍山昼はくも(久毛)と居夕されば風吹かむとそ木の
葉さやげる 古事記・歌謡
三輪山をしかも隠すか雲だにも情(こころ)あらなも隠さふ
べしや 額田王『万葉集』
北山にたなびく雲の青雲の星離(さか)り行き月を離(さか)りて
持統天皇『万葉集』
昨日こそ君は在りしか思はぬに浜松が上に雲とたなびく
大伴三中『万葉集』
春日山朝ゐる雲のおぼぼしく知らぬ人にも恋ふるものかも
中臣女郎『万葉集』
男神(をかみ)に雲立ち上りしぐれ降り濡れ通るとも我れ帰らめや
兵部川原『万葉集』