天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ギンナン

大船フラワーセンターにて

 いちょうの実。晩秋に黄色く熟し落ちる。外種皮は多肉で悪臭があり、さわるとかぶれる。内種皮は白色菱形で硬いが、その中の薄緑の果肉は風味があり食用になる。漢字で銀杏と書くが、読みはギンアンから転じた。秋の季語。


     銀杏を焼きてもてなすまだぬくし  星野立子
     天匂ふ落ぎんなんをふたつ踏み   秋元不死男


  カーテンをひけば幸のあるごとく銀杏を焼くにほひの
  こもる                山下陸奥


  散らばりしぎんなんを見し かちかちとわれは犬歯の
  鳴るをしづめし            葛原妙子


  車来ぬ都内の坂に銀杏の実人拾ひをりたのしくあらむ
                     窪田章一郎
  串ざしにぎんなん五つ皿にありてふたつの柳葉魚ともに
  にほふを                山本友一


  壺の中に銀杏の実を隠しおき夜中に出してあぶって食べる
                     山崎方代
  むらぎもに酒を沁ませてこの秋の山の実りの銀杏煎って
                     佐佐木幸綱
  ぎんなんを潰して歩む昼しずかいやはてという思いはしずか
                     三枝昂之