天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

鏡(2)

わが身辺から

 中国系の鏡は円形で背につまみがある。青銅、鉄などを材料としているが、時代によってそれぞれの特徴を持っている。背に付けられた文様には神獣、画像など種々あり、唐代には海獣葡萄文鏡、騎馬狩猟文鏡などもある。わが国では弥生時代古墳時代の遺跡から漢鏡が出土する。奈良時代には中国の鏡に影響されたものが作られたが、平安時代になると、優雅な花鳥をあしらった日本独自の和鏡が完成した。なお柄をつけるようになったのは室町時代からという。


  毛髪を解かむ鏡にいつりゐてわが顔の原寸ある怖れ
                      葛原妙子
  片すみに妻は鏡をぬぐひをり梅雨ふる宵に鼠音して
                     佐藤佐太郎
  かざしたる鏡に顔のあかるみしかなしきことも過ぎて
  おもはな               上田三四二


  家族みない寝しづまりし夜の鏡まなぶた垂れし顔うつしゐる
                      岡野弘彦
  ふしぎなるまでに一日に伸びし鬚夜の鏡のなかにうつりて
                      玉城 徹
  何も写さぬ一瞬などもあらんかと一枚の鏡拭きつつ怖る
                     富小路禎子