鼠のうた(3/3)
ねずみは哺乳綱ネズミ目(齧歯目)に属する動物で、1000~1800種もいるという。このうち、人家にあらわれ、被害をもたらすのは家ねずみと俗称されるグループで、「クマネズミ」「ドブネズミ」「ハツカネズミ」の3種らしい。
日かげ土かたく凍れる庭の上を鼠走りて土蔵(くら)に入りたり
島木赤彦
泥つかぬ桃色の足の裏見せて鼠走れり冬の畑を
石井利明
片すみに妻は鏡をぬぐひをり梅雨ふる宵に鼠音して
佐藤佐太郎
ねずみとりの中のねずみを水中にああ静やかに沈めむとする
石田比呂志
*この光景は、日本の随所で見られた。猫に鼠を捕らせることも多かった。
鳶に吊られ野鼠が始めて見たるもの己(おの)が棲む野の全景なりし
斎藤 史
*現実に見た情景からの発想と思われる。
鼠の死蹴とばしてきし靴先を冬の群衆のなかにまぎれしむ
寺山修司
白薔薇の蕾のような母鼠あまるほど子を産みて食べにし
佐伯裕子
*この歌の情景は珍しい。鼠の一般的な習性なのだろうか?