牛(1)
わが国では縄文時代にはすでに飼育されていたという。平安時代には農耕や牛車に使われた。江戸時代になると牛合せ・牛相撲といった闘牛も行われた。牡牛(ことひのうしうし)、雌牛(めうじ)といった言葉があった。牛を詠んだ歌は馬ほどではないが、現代に至るまで随分多い。
我妹子(わぎもこ)が額(ぬか)に生ひたる双六(すごろく)の牡牛
(ことひのうしうし)の鞍の上の瘡(かさ)
万葉集・作者未詳
我がのりしことをうしとや消えにけむ草葉にかかる露の命は
後撰集・閑院のみこ
行きなやむ牛のあゆみにたつ塵の風さへあつき夏の小車
玉葉集・藤原定家
里近く山路の末はなりにけり野がひの牛の子を思ふ声
寂連
あげまきの遊ぶも風の柳蔭水かふ牛のよそめ涼しき
冷泉為村
大(おほい)なる山のちからのせまるらむ山にみほれて
ひくく鳴く牛 茅野雅子