天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

川のうた(5)

多摩川(webから)

川に作者の感情・思いを反映させた歌の例を以下にあげる。自然と共に擬人化されている。
石川一成は、東京文理科大学在学当時から歌人佐佐木信綱に師事。昭和25年竹柏会「心の花」に入会、のち編集委員。高校教師 神奈川県立厚木高校教頭。


  剛直におのれを変へぬ川流れはろばろと冥し平野に鎮む
                     石川一成
  水ひびく冬の朝川わたりたりわれに従ふ風なびかせて
                     石川一成
  きらきらと道を穿(うが)ちて溢れゆく野川がありぬ
  卑弥呼の国に             石川一成


  枯るる草も枯れざる草もおのづから影のごとくに昏れて川あり
                     石川一成
  ゆく水の飛沫(しぶ)き渦巻き裂けて鳴る一本の川、お前を抱く
                    佐佐木幸綱
  ゆく秋の川びんびんと冷え緊まる夕岸を行きし鎮めがたきぞ
                    佐佐木幸綱
  夜をこめて静かに狂う夏の川金いろの星身にちりばめて
                    佐佐木幸綱
  白鳥を浮かべしは去年(こぞ)月の斑(ふ)を浴びてぜんしんを
  凍らす運河             佐佐木幸綱