天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

道のうた(4)

東山魁夷の名画「道」

 道の絵では、東山魁夷の名作を一番に思い浮かべる。青森県八戸市東部にある種差海岸にある道がモデルである。この絵を描いた頃の魁夷と日本の情況を知ると思いは深くなる。
 「この作品の象徴する世界は、私にとって遍歴の果てでもあり、また新しく始まる道でもあった。それは絶望と希望を織りまぜてはるかに続く一筋の道であった。」東山魁夷私の履歴書


  あまづたふ日は傾きぬたまぼころ家路は遠し袋は重し
                       良寛
  この道や遠く寂しく照れれどもい行き倒れる人かつてなし
                 太虚集・島木赤彦
  春おそき山路はろかに来しものか岨(そば)をうづみて
  消えのこれる雪            平福百穂


  あかあかと一本の道とほりたりたまきはる我が命なりけり
                     斎藤茂吉
  文学の道と人間創造とあひ率(ゐ)つつゆくに深きこの道
                     岡山 巌
  芒穂のひかりみだるる廃道ありしづかなるかなやこの山中に
                     橋本徳寿
  大き艦(ふね)けむり吐くみゆ朝明のしぐれにぬれし通り
  のはてに               五味保義


  いそがしく十字路横ぎる傍目(わきめ)には街頭の菊の針が
  見えけり              前川佐美雄


  うしろより誰ぞ従き来と思へどもふりかへらねば松風の道
                    前川佐美雄