道のうた(8)
「みち」に当てる漢字には、道、路、径、途 などがある。この内、「径」は図形上の差し渡しの長さを意味している。また「途」は、旅の道すじを意味する。
くらやみに水の音する道端を這ふ集塵車うしろがさびし
篠 弘
おぼめける梨の花径細眉の匂うおみなが月みあげ来る
加藤克巳
三日月湖のように残りて旧道は青葉の深き影に沈みぬ
松村正直
廃墟へつづく一筋の道に影を落し 生まあたたかい春と想う
安立公平
あずさゆみ春のひろ野に草萌えて休耕田の畦道をゆく
中川左和子
わが歩むかぎり道ありこの道にけふ照り満ちて桜盛りあがる
日比野義弘
何処(いずこ)までつづく秘鑰の道ならん「いつ迄もよ」と
手を握らるる 晋樹隆彦
白玉の露のなべてがすべり落つあした夕べに通ひたる道
長沢美津
愛敬(あいぎやう)を秘むる品(ひん)よき口許のをとめにも
會ふ下校時の道 窪田章一郎