天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

道のうた(8)

御油の宿(広重の東海道五十三次から)

 「みち」に当てる漢字には、道、路、径、途 などがある。この内、「径」は図形上の差し渡しの長さを意味している。また「途」は、旅の道すじを意味する。


  くらやみに水の音する道端を這ふ集塵車うしろがさびし
                    篠 弘
  おぼめける梨の花径細眉の匂うおみなが月みあげ来る
                   加藤克巳
  三日月湖のように残りて旧道は青葉の深き影に沈みぬ
                   松村正直
  廃墟へつづく一筋の道に影を落し 生まあたたかい春と想う
                   安立公平
  あずさゆみ春のひろ野に草萌えて休耕田の畦道をゆく
                  中川左和子
  わが歩むかぎり道ありこの道にけふ照り満ちて桜盛りあがる
                  日比野義弘
  何処(いずこ)までつづく秘鑰の道ならん「いつ迄もよ」と
  手を握らるる           晋樹隆彦


  白玉の露のなべてがすべり落つあした夕べに通ひたる道
                   長沢美津
  愛敬(あいぎやう)を秘むる品(ひん)よき口許のをとめにも
  會ふ下校時の道          窪田章一郎