天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

ウグイ

新江ノ島水族館にて

 漢字では、石斑魚、鯎などと表記する。コイ科の魚。山間部の湖や渓流から内湾まで広くすむ。春の生殖期のうぐいを特に、桜うぐい、花うぐいとも呼ぶ。雑食性。産卵期は、三月から七月。地方名には、アカハラ、クキ、ハヤ(東京)、イダ(中国、四国、九州)などがある。牧水の歌の「うろくづ」は、肴の古名。


  瀬(せ)瀬(ぜ)走るやまめうぐひのうろくづの美しき春の
  山ざくら花              若山牧水


  二0五0年われらあらざらむ夕映えのごとく朱の色を
  佩(は)きたる石斑魚          志垣澄幸


  唐野山(からの)よりせせらぐ水に育ちたる石斑魚は橅の
  淀へ奔(はし)れり           大滝貞一


  花うぐひ幾つか釣れし和(なご)ましさ鉄橋渡る電車見送る
                     田中粒一
  汐合川月の出潮にうぐひ飛びそのたまゆらの会ふ瀬といふや
                     春日井荇
  幼子がただ眺めゐるはずがなくバケツのなかの石斑魚(うぐひ)
  がさわぐ               木村悦子


  透りたる尾鰭を見れば永遠はすずしそうなり化石の石斑魚(うぐい)
                     渡辺松男
  対岸の小高き岩にゐる人の釣り上げたるは鯎(うぐい)か光る
                     神作光一