自転車(2/10)
足蹴り方式からペダル方式へ移行したのは、1839年スコットランドで鍛冶屋カークパトリック・マクミランが発明した鉄製の「ベロシペード」による。原初の自転車で、その仕組みは、足の近く両側にレバーを取り付け、レバーの片端はフレームにくっついていて、もう片端には短いレバーがくっついていた。それにはペダルがつけられており、乗り手がペダルを振動させると、後ろの車輪に取り付けられたロッカー棒が回転した。
宙吊りにされし店内の自転車が運命を待つごとく華やぐ
長沢一作
われらルーツに帰りゆくかな冬晴の路上に銀の放置自転車
早崎ふき子
若き僧乗る自転車が胴顫ひしつつ桜の奥に吸はるる
黒木三千代
神田川の潮ひくころは自転車が泥のなかより半身を出す
大島史洋
突風にことごとく自転車横転し何か燦然とありぬわが内
千々和久幸
自転車に遊べる女童けふの日を五十年後によき時代と思はむ
志垣澄幸
昼顔の咲く塀沿ひに少年は自転車のリム光らせて過ぐ
志垣澄幸