天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

泡(1/3)

NHK「サイエンスZERO」の映像から

 漢字では沫とも表記する。液体が空気を包んでできた小さい玉。あぶくとも言う。特に水の場合には水泡と呼ぶ。古典和歌に詠まれる泡は、はかないことのたとえに使われることが多い。それを強調した言葉に、泡沫(ほうまつ)、うたかた がある。


  うきながらけぬる沫ともなりななむ流れてとだに頼まれぬ身は
                     古今集紀友則
  わたつ海の沖つ塩あひに浮ぶ沫の消えぬものからよる方もなし
                   古今集・読人しらず
  秋山にまどふ心をみやたきの滝のしらあわに消ちやはててむ
                      後撰集・素性
  流れてのよをも頼まず水の上の沫に消えぬるうき身と思へば
                    後撰集大江千里
  庭たづみ行方(ゆくかた)しらぬものおもひにはかなき泡の
  消えぬべきかな          新勅撰集・本院侍従


  目撃者は我にて沼にわく泡の限りなければ手を垂れ居たり
                        斎藤 史