天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

住のうたー家・庵・宿(12/14)

  み吉野の山のあなたに宿もがな世のうき時のかくれがにせむ

                古今集・読人しらず

*「 吉野の山の向こうに宿があったらいいのに。そうしたら世の中が嫌になった時の隠れ家にしよう。」

 

  荒れにけりあはれ幾世の宿なれや住みけむ人の音づれもせぬ

                古今集・読人しらず

  侘人のすむべき宿と見るなべになげき加はる琴の音ぞする

                 古今集・良岑宗貞

*詞書に「奈良へまかりける時に、あれたる家に、女の琴ひきけるを聞きて、よみて入れたりける」とある。

 

  君が住むやどの梢をゆくゆくと隠るるまでにかへりみしはや

                 拾遺集菅原道真

*道真が左遷されて都を離れるときに詠んだ。

「あなたと一緒に暮らした家の梢を何度も振り返って見たのだった。」

 

  住みわびぬ今はかぎりと山里につま木こるべき宿もとめてむ

                 後撰集在原業平

*「都会に住むのも嫌になってしまった。今はもうこれまでと、山里へ逃れて槇でも割りながら生きる家でも探そう。」

 

  我が宿にあひやどりして鳴く蛙よるになればや物はかなしき

                後撰集・読人しらず

  なき人の来る夜ときけど君もなし我が住む宿や魂なきの里

                後拾遺集和泉式部

*「亡き人が訪れる夜だと聞くけれども、あなたはいない。私の住まいは「魂無きの里」なのだろうか。」

 

  すだきけむむかしの人もなき宿にただかげするは秋の夜の月

                  後拾遺集・恵慶

 

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秋の夜の月