天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

姉、妹を詠む(3/7)

  朝(あさ)羽(は)振り姉は飛びゆき夕羽ふり帰りこざりきこの庭の上(へ)に

                      高野公彦

*朝((夕)羽振る: 朝(夕)方、鳥が羽ばたくように、波や風が立つ。

 

  スティングレーのりまはす姉ワルキューレ狂ひのおほあね撲りあふ朝 

                      仙波龍英

*スティングレー: スズキが製造販売している自動車。ワゴンタイプが普及。

ワルキューレ: 本田技研工業が製造販売しているアメリカンタイプのオートバイ。

 

  祖国にも意地にも杳く臆病な男子(おのこ)であれと姉のこころは

                      寺戸和子

  病死せし姉を翳りに曳くわれに病衣の汝の微笑みかへす 

                      野江敦子

*下句の汝は、死んだ姉と同じ病院にいた患者であろう。姉の面影をひく作者に微笑んでくれたのだ。

 

  姉よ姉よ身を起こし見よ裸木の股に挟まりて燃ゆる太陽

                      竹山 広

  めぐまれて姉なるひとのありしこと老いて恋しも亡き姉の貌

                      坪野哲久

  仇討ちをしてくれる姉われになく心傷つけば布巾を洗ふ

                      栗木京子

 

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スティングレー