わが歌枕―伊良湖崎

　渥美半島突端の岬。伊良湖と鷹は関係が深く、古代から「鷹渡り」の中継地点として知られていた。芭蕉の「鷹一つ見付てうれし伊良湖崎」は有名で、公園に句碑がある。

　　うつせみの命を惜しみ波に濡れいらごの島の玉藻刈り食む
　　　　　　　　　　　　　　　　　　麻績王『万葉集』
　　汐さいにいらごの島べこぐ舟に妹のるらむか荒き島みを
　　　　　　　　　　　　　　　　　柿本人麿『万葉集』
　　玉藻刈るいらごが崎の岩根松幾世までにか年の経ぬらん
　　　　　　　　　　　　　　　藤原顕季『堀河百首』
　　いらござきにかつをつり舟並び浮きてはがちの波に浮びてぞ寄る
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　西行『山家集』
　　すたか渡るいらごが崎をうたがひてなほきにかくる山帰りかな
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　西行『山家集』
　　波もなし伊良胡が崎にこぎいでてわれからつけるわかめかれ海士
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　西行『山家集』
　　しまひびくいらごがさきのしほさゐにわたる千鳥はこゑのぼるなり
　　　　　　　　　　　　　　　　　藤原家隆『壬二集』
　　ふきおくるいらごがさきのしほかぜにやすくとわたるあまのつりぶね
　　　　　　　　　　　　　　　寂身法師『寂身法師集』
　　海の上は伊良胡の野島前にあり海吹く風の島に吹くみゆ
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　土屋文明

　　　椰子の実の流れ着くこと確かめし伊良湖岬の恋路ケ浜に