天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

現代俳句の笑いー掛詞・枕詞

こぶしの花(街路樹)

 掛詞は室町時代俳諧連歌以降、特に江戸時代の貞門俳諧において盛んに使用された。以下に数例をあげる。

     
     手をにぎるこぶしの花のさかりかな
            『竹馬狂吟集』(室町時代俳諧集)
     見事やと誰も五体をゆりの花      松永貞徳
     印地して人をあやめの節供哉      古仙慶友
     みじか夜はひとまろねしてあかし哉   畑 永治


これらは掛詞・同音異語による駄洒落で、読んですぐにわかるが俗っぽい笑いになる。対して川崎展宏は、和歌の雅を継承する枕詞をよく用いた。以下の太字部分。


     桃の咲くそらみつ大和に入りにけり 
     鶏が鳴く吾妻に欅もみぢあり 
     ともしびの明石の宿で更衣  
     玉くしげ箱根のあげし夏の月 
     むらぎもの心くだけし牡丹かな 
     畳薦(たたみこも)平群(へぐり)の丈夫(ますらお)より賀状