天空のうた(15)
以下にあげた作品は、いずれも特異な視点で詠まれている。日常の風景も視点を考えることで
謎をまとって奥深くなることを示しているようだ。それにしても寺山修司の前衛短歌は難解である。共感できないし、独りよがりじゃないか、との反発もでそう。
たれか投げし命綱あり きらきらと葡萄実れるそらに光りぬ
葛原妙子
ゆふぐれの山のしずかさ仰ぎ見て岩明るきは空ちかきため
佐藤佐太郎
空ひくく光は生(あ)れてうちふるふ黄金(くがね)となりぬ谷の垣山
山本友一
ひややかに夜明けむとする空のごとし嗟汝の窯の青磁香炉はや
玉城 徹
空は本それをめくらんためにのみ雲雀もにがき心を通る
寺山修司
巨きタイヤ日ざしを浴びて過ぎゆけば路上にくだる空の明るさ
小野茂樹
雨期きらう父に伐られて無花果のもつとも深い空見うしなう
平井 弘