川のうた(6)
二首目のカロッサは、ドイツの開業医にして小説家であり詩人でもあったハンス・カロッサのこと。
竹山 広の歌は、長崎原爆のかの日の思い出である。岩田 正の歌に詠まれている川は、住まいの近くの麻生川であろう。
河のむかうの木群にひとりゐる人の眼鏡光りて見ゆることあり
小見山輝
カロッサの詩に憧れし思い湧き草生色づく河川敷ゆく
斎藤 博
白地図のみどりのすぢを思ふかな新幹線に河越ゆるたび
花山多佳子
かがやきて声あぐる水この川のかの日の死者をわれは語るに
竹山 広
鍬洗う川にちりちり砕けいる月は一人のものでしかない
池本一郎
川沿ひのアパート住まひの夕べ夕べトランペットの鳴つてゐた空
岩田 正
柿生坂くだれば麻生の川流るどこにでもあるあつてよき川
岩田 正