天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

神を詠む(5/9)

  未だ知らぬ野みち山みちいづれにか神のめすらむ方に行かばや
                      片山広子
  あをぞら の ひる の うつつ に あらはれて われ
   に こたへよ いにしへの かみ
                      会津八一
  われはここに神はいづこにましますや星のまたたき寂しき夜なり
                      柳原白蓮
  さびしあな神は虚空の右よりにあらはるるとふかき消ゆるとふ
                      葛原妙子
  屋台にてする焼酎のひとり飲みいかなる神かかたへに来ます
                      山本友一
  神、人とわかたぬまでにいのち満ち女神の陰(ほと)を直截(ちょくせつ)に彫る
                      鈴木英夫
  「神の剣(つるぎ)」のごとくにぞ夏の雲光りめぐり来たれる八月十五日
                      前田 透

 

 一首目: 「神のめす」とは、「神が呼び寄せになる」の意。
 会津八一は、新潟県出身の歌人・美術史家・書家。中学生の頃より万葉集良寛の歌に親しんだ。早稲田大学英文科卒業2年後に行った最初の奈良旅行が、奈良の仏教美術へ関心を持ち、またこの旅行が俳句から短歌へと移るきっかけともなった、という。
 柳原白蓮は自分の数奇な人生を思って、神の存在を信じていなかったのだろう。
 葛原妙子の歌で、「神は虚空の右よりにあらはるる」というのは、どこの言い伝えなのだろうか。
 鈴木英夫は、昭和-平成時代の歌人、医師。北原白秋に師事し、「多磨」創刊にくわわる。戦後、医院をいとなむかたわら「コスモス」創刊に参加。平成22年に98歳で死去。
 前田透は、歌人前田夕暮の長男。第二次大戦中は、中国、フィリピン、ジャワ、ポルトガル領チモール島に派遣され、昭和21年に帰国している。この歌は、終戦記念日の情景を詠んでいる。
「神の剣」とは、日本神話に登場するいくつもの刀を思えばよいだろう。

 

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夏の雲