病を詠む(11/12)
君病みがちにうら若くして女神のごと集団ありき何にみな過ぐ
近藤芳美
虹にかけし手が堕ちてゆく夢覚めてまた病むと知るこの朝の冷え
杉山敏代
千羽鶴はなばなしくも吊るされて祭りのごとくわれは病まむか
久保田幸枝
湯たんぽに病む身ほのぼの温もればまた眠りなむ夕餉来るまで
佐々木茂雄
病み次げる身内に留めし寂寥に繋がりて照る砂丘の起伏
秋葉静枝
病む程に澄みまさりゆく眸のなかに母われの顔小さく映れる
稲垣道子
母ふたり病みてこの世にあることを幸ひのごとく思ふ夜あり
大和和子
近藤芳美の歌は、下句が唐突で詰屈。一体何を言いたいのか。君が病みがちで女神のようだ、という上句。君が所属する集団があるが一体何に向かっているのだろうか、と見ている。そうとしか読めないが、読者の共感を得にくいだろう。
稲垣道子の歌では、病がすすむにつれて澄んでゆくわが子の眸に映る母としてのわが顔を詠んでいる。母としての悲しみがよく表現されていて哀切。