芭蕉開眼の前後(3/5)
本歌・引用の出処・種類
前章でいくつか例を示したが、芭蕉の本歌取り法(引用法)で作られたおおむね全ての作品について、本歌・引用の出処・種類を調べると、次のようになっている。
和歌: 43句
『山家集』『古今集』『新古今集』『千載集』『万葉集』『金葉集』『詞花集』
『玉葉集』『後撰集』『新勅撰集』『拾遺愚草』木下長嘯子『挙白集』、
吉田兼好の歌など
謡曲・浄瑠璃: 21句
「鞍馬天狗」「実盛」「山姥」「竹雪」「九世戸(くせのと)」「田村」
「大江山」「百万」「岩船」「朝長」「敦盛」「鵜飼」「姥捨」「難波」
「鸚鵡小町」「忠度」「東北」「融」
漢籍: 26句
『論語』『墨子』『淮南子』『和漢朗詠集』「後赤壁賦」『荘子』
『詩人玉屑(ぎよくせつ)』『菜根譚』『白氏文集』、
賈(か)島(とう)「桑乾(そうかん)ヲ渡ル」、杜牧「早行(そうこう)」、
王維「竹里館」、蘇東坡詩、菅原道真の詩、杜甫の詩
物語: 16句
『枕草子』『源氏物語』『伊勢物語』『今昔物語』『徒然草』『西公談抄』
『撰集抄』)
俚諺・故事: 4句
その他(小唄、俳句、狂言 他): 6句
芭蕉に限らず、俳諧に精進する人たちの教養の幅広さには、驚くばかりである。これは後世の与謝蕪村や小林一茶にも引き継がれる。