喩に沈む季節(8/8)
7.現代短歌にも季節の秀歌はある
現代歌人にも季節感あふれる歌はある。感覚的にも古典和歌に優るとも劣らないことは、本文はじめに少し紹介したが、ここでは季語を比喩表現ではなく、まともに使っている秀歌を四季それぞれから一首づつ挙げておく。
〈女は大地〉かかる矜持のつまらなさ昼さくら湯はさやさやと澄み
米川千嘉子
円形の和紙に貼りつく赤きひれ掬われしのち金魚は濡れる
吉川宏志
さなきだに秋の終りはいぶせきを柿の木に千のひとみ充血
大辻隆弘
寒夜空ぼおつと燃えて過ぎたるは獅子座流星群または性愛
小島ゆかり
一首目は、どこか古典調だが現代女性の感懐。
二首目は、現代人の認識・知性に溢れる。
三首目は、近代以降の詩のセンスを包含。
四首目は、現代的感性による取り合せの妙。
短歌の評価基準も時代と共に変化する。秀歌といえど百年後は退屈になるであろう。
参考文献
角川『短歌』平成十四年二月号、特集「春を詠む」。
『合本俳句歳時記』第三版、角川書店。
『現代短歌最前線 上・下』北溟社。
『新古今和歌集』佐々木信綱校訂、岩波文庫。
『基本季語五00選』山本健吉、講談社学術文庫。
『通解・名歌辞典』武田祐吉、土田知雄、創拓社。
『レトリック感覚』佐藤信夫、講談社学術文庫。
『喩と読者』永田和宏、而立書房。
『短歌の技法―イメージ・比喩―』嶋岡 晨、飯塚書店。
