平安・鎌倉期の僧侶歌人(5/17)
素性(生年不詳 - 延喜10年(910年)?)
父の遍昭(遍照とも)と共に宮廷に近い僧侶として和歌の道で活躍した。はじめ宮廷に出仕し、殿上人に進んだが、早くに出家した。歌風は軽妙洒脱の中にも優美さがあり,静止的で絵画風な歌の中にもその一端がうかがわれる。
[生活感]
あらたまの年たちかへるあしたより待たるるものは鶯のこゑ 拾遺集
見わたせば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける 古今集
雨ふらば紅葉のかげにやどりつつ龍田の山に今日は暮らさむ 続古今集
秋風に山の木の葉のうつろへば人のこころもいかがとぞ思ふ 古今集
[旅の感懐]
思ふどち春の山べにうちむれてそことも言はぬ旅寝してしか 古今集
いそのかみふるき宮この郭公こゑばかりこそ昔なりけれ 古今集
[人生観]
いづくにか世をばいとはむ心こそ野にも山にもまどふべらなれ 古今集
*「いったいどこで遁世の暮らしを送ろうか。身体は一所に定住したところで、
心の方は野にいても山にいても惑うに決まっているのだから。」世俗を捨てた
身とはいえ、その心は厭世とともに耽美にも揺れ動く、という。