天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

平安・鎌倉期の僧侶歌人(2/17)

喜撰(生没年未詳)
 平安時代初期の真言宗の僧・歌人。宇治山に住んだ。六歌仙の1人。古今集仮名序には「ことばかすかにして、はじめ、をはり、たしかならず。いはば、秋の月を見るに、あかつきのくもにあへるがごとし。よめるうた、おほくきこえねば、かれこれをかよはして、よくしらず」と評されている。次の二首の歌のみが伝えられる。

[生活感]
  わが庵は都のたつみしかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり      古今集
 *しかぞすむ:このように住む。世をうぢ山:「世を憂」「宇治山」の掛詞。
[旅の感懐]
  木の間より見ゆるは谷の蛍かもいさりにあまの海へ行くかも     玉葉
 *『伊勢物語』の「はるる夜の星か川辺の蛍かも我がすむかたにあまのたく火か」と
  同趣向。

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宇治山 (WEBから)