水のうた(8/17)
人はきて憩いているや灯(ひ)に染まり黄に照る水の仮象の色に
武川忠一
単純に流れぬ水のゆくえなど心けわしき夜は思うも
武川忠一
ひかりつつ暗渠ゆながれおつる水涎(よだれ)のごとくこほりつきたり
時田則雄
*暗渠とは、地下に埋設したり、ふたをかけたりした水路のこと。
水面に刺さる一瞬水ならず輪をひらきつつ走る雨脚
時田則雄
*走る雨脚の躍動感。
腹這ひて論じぬおなじ水脈のみづに育てば草も樹も朋
時田則雄
*「腹這ひて論じぬ」が特異な情景。
舗装され逃げみづ冴ゆる村の道しんと向かうの真昼へつづく
牛山ゆう子
*逃げ水とは、風がなく晴れた暑い日に、アスファルトの道路などで、遠くに
水があるように見える現象で、近づいてもその場所に水はなく、さらに
遠くに見え、まるで水が逃げていくように見えることからこの名前が
つけられた。(『ウィキペディア(Wikipedia)』から)
かがやきて落ちくる水の裏側にわおんわおんと岩ひびきをり
春日真木子