感情を詠むー「恥づ・恥」(1/2)
辱(はぢ)を忍び辱を黙(もだ)して事も無くもの言はぬ先にわれは依りなむ
万葉集・作者未詳
*竹取の翁が詠んだ長歌と二首の歌に、九人の仙女たちが和えて詠んだ歌の一つ。
意味は、「恥かしい行いをしたのにも耐えて言い訳せずに、何を置いてもまず
あれこれ言う前に私は翁の教えに従います」
里人の見る目恥づかし左夫流児(さぶるこ)にさどはす君が宮(みや)出後(でしり)ぶり
万葉集・大伴家持
*左夫流児: しなやかな美女、うかれめ、遊女。
さどはす: 血道をあげる。
「この私までが恥ずかしいよ。左夫流子に血迷っていそいそと出勤していく
後姿を里人達が笑っているのをみると。」
家持が部下の所業に対して説教したのだ。
人間のいのちの奥のはづかしさ滲(し)み来るかもよ君に対(むか)へば
新井 洸
*向き合って話していると、こちらの生き方が恥ずかしくなるような人がいるものだ。
たはやすく口にまうして昨日恥ぢ今日も白(まを)さく言のよろしさ
島木赤彦
*恥ずかしいことをしたと、簡単に口に出して言うことができる人は羨ましい。
いふことの思ひ忘れし笑み声におのづと恥らふ人にうれしく
福田栄一
逃亡を恥と信ずる悲しみの言ふべくもなく曳かれゆきたり
山本友一
*信条が大きく異なる政権の国に生きることは苦しい。反抗しないで逃げ出せれば
楽なのだが。
かさなりてかさなりて恥かさなりてかさなりてかさなりて苹果(アツプル)
岡井 隆
*さんざんに恥を重ねてリンゴのように真っ赤になったのであろう。人は恥をかくと
赤くなる。赤つ恥をかく、という。