天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

身体の部分を詠むー顔 (6/7)

  こめかみに痙攣走り怒るとはかくも美し人間の顔
                       長谷川愛
*怒っている人の顔を美しいと感じるとは。どんな関係にある人なのだろうか。

  学生を伴ひ歩みくる顔は若き日のわれが見知らざる顔
                        河野裕子
  何といふ顔してわれを見るものか私はここよ吊り橋ぢやない
                        河野裕子
河野裕子の歌は、いずれも夫君の永田和宏のことを詠んでいる。

  こんなこともあるさと言つてゐるやうな 顔削られし聖人像は
                        香川ヒサ
*聖人とは誰なのか知りたくなる。

  提言を終へたるのちのしづまりに立ちておのれの顔晒しゐる
                         篠 弘
*提言を終えて周囲がシンと静まっていると自分の顔を意識するのだ。

  悪役につねに扮する俳優の素顔気弱(きよわ)に見ゆれば親し
                       片山新一郎
*よく経験することだろう。

  池の面に沈黙のわが顔うつし一心にわれがのぞきてをりぬ
                        藤岡武雄
  カメラ持つわれに向かって笑いおりそれぞれ顔の造りに合わせ
                        武村公作

f:id:amanokakeru:20200107000109j:plain

カメラ