天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

蕪村俳句と比喩―直喩(2/4)

     白梅やわすれ花にも似たる哉
     裏枯(うらがれ)の木の間にも似たり後の月   
*末枯れの木の間もそこに見える後の月も万物凋落の季節に向かう寂しさを感じさせる。

     卯の花の夕べにも似よしかの声   
     枸杞垣の似たるに迷ふ都人      
*京の人が洛外に家を訪ねて行って、どこも似たような枸杞垣(枸杞のいけ垣)なので迷っている。

     一八やしやがちちに似てしやがの花
*一八としゃがの花が似ているのを、謡曲の文句を利用して、親子のようだと洒落た。

     鶯の麁相(そさう)がましき初音かな
*鶯の初音なんてお粗末なものだよ、と世の風雅心を揶揄した。

     おくびなり席(ついで)がましき田植哉
     虫売(むしうり)のかごとがましき朝寝哉     
*朝寝を夜の仕事のせいにする虫売りのかこつけ顔を詠んだ。

     朔日(ついたち)のまことがましきしぐれかな
     うぐひすのわするるばかり引音(ひくね)哉
*「ホーホケキョ」の「ホー」を、長く伸ばして鳴くうぐいすの得意然たる様子。

     畠打(うつ)や鍬(くは)の柄(え)も朽(くつ)るばかりにぞ
     狐火の燃(もえ)つくばかり枯尾花     

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鶯 (WEBから)