蕪村俳句と比喩―活喩(擬人法)(4/8)
病起(やみおき)て鬼をむちうつ今朝の秋
*夏の間苦しめられた病の鬼を、病も癒えた立秋の朝、追い払おうという。
つりがねの肩におもたき一葉かな
萍(うきくさ)のさそひ合(あは)せておどり哉
いな妻の一網(ひとあみ)うつやいせのうみ
稲妻や海あり皃(がほ)の隣国(となりぐに)
秋の蚊の人を尋(たづぬ)る心かな
日を帯(おび)て芙蓉かたぶく恨(うらみ)哉
蘭夕(ゆふべ)狐のくれし奇南(きやら)を炷(たか)む
*白楽天の詩を踏む。蘭が芳香を放つ秋の夕べ、狐のくれた奇南(伽羅)をたいて、幻想の世界に遊ぼう、という。
長櫃(ながびつ)になれも入折(いれをる)よ女郎華(をみなへし)
葛の葉のうらみがほなる細雨(こさめ)哉
鶏頭の根にむつまじき箒(はうき)哉