天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

衣のうたー帯・紐(2/3)

  夏の帯砂(いさご)のうへにながながと解きてかこちぬ身さへ細ると
                     吉井 勇
*かこつ: 不満、ぐちを言う。夏帯をしていると身さえ細ってしまう、と愚痴ったのだ。それでなくとも夏痩せするのに。

  朝なればさやらさやらに君が帯むすぶひびきのかなしかりけり
                     古泉千樫
  日の光洩れぬ峡(はざま)の木がくれにひそかに帯を巻きなほすかも
                     原阿佐緒
*なんとも艶めかしい雰囲気。

  梳棉機(そめんき)に梳(す)かれむとして白(しろ)太(ぶと)の帯なす綿は殊に真白し
                     五島 茂
*梳綿機: 採取した繊維を櫛で均して、繊維方向が揃った綿状の塊にする機械。

  帯の高さ気にして兄に問ふ汝(なれ)は恋ふべき母の記憶を持たず
                     柴生田稔

*この歌で、母とは作者の妻と解釈するのが普通であろう。そして兄、汝は作者の子供たちなのだ。妹(汝)が幼いころに母が亡くなって、締める帯の高さなど知らないのだ。兄なら母から教わっていたはず、と妹が兄に質問している情景であろう。

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夏の帯