天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

音を詠む(4/6)

  くる人のむかふふぶきに物いはで雪ふむ音のさゆる道のべ

                         正徹

  ゆく船の跡より見えね春霞たつ白浪の音ばかりして

                       水戸光圀

  春雨の降るとも見えず谷かげは岸のしづくの音ばかりして

                       荷田春満

  あめつちにわが跫音(あおと)のみ満ちわたる夕さまよひに月見草摘む

                       若山牧水

*月見草: アカバナ科の越年草。北アメリカ原産。江戸時代に観賞植物として渡来。オオマツヨイグサの別称。

 

  川の瀬としぐれの雨と交はりて音する夜半(よは)にしばしば目さむ

                       斎藤茂吉

  水ぐるま春めく聴けど一方(ひとかた)にのる瀬の音もかがやくごとし

                       北原白秋

  かしましき機械の音に耳張りつめ目には見て居り工場内部

                       木下利玄

 

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月見草