くる人のむかふふぶきに物いはで雪ふむ音のさゆる道のべ
正徹
ゆく船の跡より見えね春霞たつ白浪の音ばかりして
春雨の降るとも見えず谷かげは岸のしづくの音ばかりして
あめつちにわが跫音(あおと)のみ満ちわたる夕さまよひに月見草摘む
*月見草: アカバナ科の越年草。北アメリカ原産。江戸時代に観賞植物として渡来。オオマツヨイグサの別称。
川の瀬としぐれの雨と交はりて音する夜半(よは)にしばしば目さむ
水ぐるま春めく聴けど一方(ひとかた)にのる瀬の音もかがやくごとし
かしましき機械の音に耳張りつめ目には見て居り工場内部
木下利玄