天野 翔のうた日記

俳句はユーモアを基本に自然の機微を、短歌は宇宙の不思議と生命の哀しさを詠いたい。

絵画を詠む(2/6)

  うつしゑの肩のほそりを見入りつつ寄りそふけはひ身におぼゆなり

                        松田常憲

*うつしゑ: 景色や人物などを描き写した絵。写生画。

 

  この多忙な、人は恋しなかったか、

  モナ・リザの、微笑も、

  一時の憩ひだったのか。

                        赤木健介

モナ・リザを描いたレオナルド・ダ・ヴィンチのことを詠んでいる。

 

  雨のなかヴァチカンに来て壮大の画を見しことを長くおもはん

                       佐藤佐太郎

  千年の古墳より覚めて彩色の壁画の女春日をまぶしむ

                        太田青丘

*1972年に発見された高松塚古墳の極彩色の壁画(西壁女子群像)を詠んだものであろう。

 

  磔刑(たくけい)の絵のまへにいたくうつむきて体温ひくかりし愛とおもへり

                       生方たつゑ

  ルオーのキリストは黒き輪郭をもちをり茫々とわれは溶けつつ

                       倉地与年子

  一枚の絵に会ひに来し美術館思ひゐしよりその絵小さし

                        高旨清美

  絵屏風にほのか色づく萩群れて余白静かに土のひろがり

                        小林邦子

 

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ルオーのキリスト